今年度から本格実施された「給付奨学金」に関して、7月11日付けで独立行政法人 日本学生支援機構に要請書を送付しました。また、7月21日、東京の日本学生支援機構市ヶ谷事務所を訪れ、要請書にもとづく申し入れを行いました。
要請の趣旨は以下の通りです。
【奨学金制度および奨学金に関する教職員の業務についての要請】
日頃より、子どもたちの「学ぶ権利」保障につながる奨学金事業にとりくまれていることに敬意を表します。
さて、学校現場では、貧困と格差が拡大し、経済的理由で進学をあきらめる生徒が多数に及ぶ状況のもと、奨学金制度の拡充、とりわけ返済の必要がない給付型奨学金制度の確立、実質的に「教育ローン」となっている有利子の貸与型奨学金の無利子への切り替えが強く求められています。
こうした中、今年度から給付型奨学金が本格実施され、平成30年度進学者を対象とした「給付奨学金」の募集も開始されました。これは、「学ぶ権利」保障に向けた大きな前進です。しかし、支給対象が「1学年2万人」と極めて限定的なものとなったため、希望者全員に保障されず、各高等学校に「推薦枠」が割り当てられ、校内で選考を行う制度となったことは、以下に見るとおり極めて重大な問題を含んでいます。
第1に、必要とするすべての生徒に支給されないことで、生徒の間に不公平が生じ、現場で選別することで、今後、生徒との対応に困難が生じることが懸念されます。
第2に、「過去の進学実績」で推薦枠を割り当てることは、経済的弱者の多い学校の現状を追認し、格差を固定化するものです。
第3に、そもそも貸与型奨学金も含めて、日本学生支援機構の奨学金に関する業務は、教職員の本来業務でないにも関わらず、その負担が極めて過重となっており、長時間過密労働の原因ともなっています。とりわけ、給付奨学金の推薦者を学校で選考することは、個人情報の管理や選考結果への説明責任など教職員に特に過重な負担を強いています。また、申請手続きのための生徒指導、申請書類の点検・確認などに膨大な時間が取られています。大阪の府立高校では、全日制教員一人あたりの年間超過勤務が平均で400時間を超えるなど、教職員の異常な長時間労働が重大問題となっており、子どもたちと向き合う時間を確保するために、本来業務以外の業務を学校から切り離すことは喫緊の課題です。
以上のことから、下記の事項について要請します。
記
1.すべての子どもたちの「学ぶ権利」保障に向けて、奨学金制度を拡充すること。
①給付奨学金について、募集枠を抜本的に拡大し、必要とするすべての者に支給すること。
また、支給額を引き上げ、少なくとも授業料相当額を下回らないようにすること。
②給付奨学金の各校ごとの「推薦枠」は撤廃し、日本学生支援機構において責任をもって採用者
を決定すること。
③貸与型奨学金については、第一種(無利子)に統一し、枠を抜本的に拡大すること。
2.教職員に過重な負担を強い、長時間労働の原因となっている日本学生支援機構の奨学金にかか
わる業務は、学校から切り離し、日本学生支援機構において責任をもって行うこと。
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