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「全校一斉退庁日」「ノークラブデー」実施通知について(見解)

2016.12.08

 府教育委員会は12月7日、府立学校長・准校長に宛てた教育長名の通知を発し、「全校一斉退庁日」と「ノークラブデー」を、1月1日から試行実施、4月1日から完全実施するとしました。その具体的内容は、①遅くとも午後7時までに全員退庁するものとする「全校一斉退庁日」を週1回設定する、②部活動を行わない日をクラブごとに週1回以上設定しノークラブデー(部活動休養日)として明確にする、というものです。
 この通知の背景には、出退勤記録データによる全日制教員の年間超過勤務時間が平均で400時間を超えるなど、教職員の異常な長時間労働の実態があります。府高教は、この間の交渉で、こうした深刻な職場実態を示し、府教委の責任による長時間労働の解消を強く求めて来ました。今回の通知がこうした私たちの運動を反映したものであることは重要です。しかし、今回の通知内容は、以下の点から極めて不十分であり、長時間労働の解消につながるものとはなっていません。

 第1に、通知は、「長時間勤務の一層の縮減」に向けて「各校の特色や状況に応じた縮減に向けたとりくみ」の促進、「勤務時間管理及び健康管理」の徹底をあげ、「教職員一人ひとりの意識改革を推進することが重要」としていますが、現在の異常な長時間労働の根本原因は、相次ぐ定数削減による人員不足と、トップダウンによる現場への業務押しつけであり、教職員の意識の問題にすり替えるのは極めて不当です。
 この間府教委は、2013年3月にプロジェクトチーム報告書をまとめ、教員の業務負担軽減方策を実施してきましたが、それ以降も出退勤データによる超過勤務時間は一貫して増加しており、有効なものとなっていないことは明らかです。これについて府人事委員会も10月に出した勧告(意見)の中で、「教員の長時間労働が常態化しており、課題は深刻」「教育委員会においては、従来の校長を通じた対応によるだけでなく、自らの責任として教職員の現場の実情把握に努め、速やかに長時間労働の抜本的解決に向けた具体的な対応が求められることを強く指摘しておく」としています。
 今求められているのは、この間に削減された実習教員、事務職員、技術職員定数の回復を含め、校職員定数を抜本的に改善し教職員を増やすことです。また、過度の学校説明会や「授業アンケート」など現場の意向を無視して押しつけられている業務、育英会の奨学金事務など本来教職員の業務でない業務を抜本的に減らすことです。こうした抜本的な施策がなければ、どのような施策も長時間労働解消にはつながりません。

 第2に、通知は、「全校一斉退庁日」について「遅くとも午後7時までに全員退庁」としていますが、全日制教職員の勤務時間は午後5時までであり、本来、すべての勤務日について「定時退庁」が大原則です。とりわけ教員については、給特法(国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)のもとで、「限定4項目(①生徒の実習、②学校行事、③職員会議、④非常災害)」以外の超過勤務は「命じない」とされているのであり、臨時でも緊急でもない通常業務での超過勤務はそもそも違法です。通知は、こうした根本的な認識を欠落させ、「一斉退庁日」においてさえ、2時間あまりの違法な超過勤務を容認するものとなっています。

 第3に、今回の通知発出にあたって、組合との十分な事前協議が行われなかったことは極めて不当です。「一斉退庁日」や「ノークラブデー」は、有効な対策となりうるものですが、学校現場の論議や意見集約なしに「上から」実施を押しつければ、逆効果ともなりかねません。すでに学校現場では、「退勤スリット後の居残り残業」なども報告されており、抜本的対策なしに「完全実施」することで、こうした事態がまん延することも懸念されます。

 以上の点から、今回の通知はきわめて不十分であり、府高教として府教委に厳しく抗議するとともに、実施にあたっては学校現場での十分な論議と教職員の合意が大前提であることを強く指摘するものです。府高教は、引き続き定数増など長時間労働解消に向けた抜本的対策の早急な実施を求めるとともに、「退勤スリット後の居残り残業」や「持ち帰り残業」などの拡大を許さず、「一斉退庁日」「ノークラブデー」が実効あるものとなるよう、必要なとりくみに全力をあげます。

2016年12月7日

大阪府立高等学校教職員組合